
相変わらずの夕木春央である。
いわゆる"密室殺人"の状況を描き、最後に明かされる殺人犯は相変わらず予測不能。
読書界隈では話題を呼んだ同著者の作品『方舟』に続き、今作品『十戒』も夕木春央ワールド全開なので、ぜひどんでん返しの餌食になってほしい。
ちなみに、モーセの十戒とのつながりはおそらくあまりなく、シンプルに作中で10の戒律が定められることからこのタイトルがついたのだと思う。
(モーセの十戒のうち、第6戒の「殺してはならない」という戒律に関しては真っ向から破っている。)
とはいえ、カルト宗教を信仰する親の元で宗教2世として育った方(今は信仰していないらしい)の目線として、宗教に絡む内容をモチーフにしている部分もあり、解像度の高さがうかがえる。
『十戒』の作品基本情報

| タイトル | 十戒 |
| 著者 | 夕木春央 |
| ジャンル | ミステリー |
| ページ数 | 378ページ |
| 出版社 | 講談社 |
『十戒』あらすじ(ネタバレ無し)
小さな離島で起こる殺人

舞台は枝内島という小さな離島だ。
主人公の伯父が所有していた島だが、伯父がなくなったことを機に、リゾート開発の計画の話が持ち上がった。
そこでリゾート開発の下見として、観光開発会社、不動産会社、建設会社の方と父とともに島に渡る。
特に変わった様子もなく、普通に島に到着し、一夜を明かしたとき場は騒然としていた。
この小さな島の中で殺人事件が起きたのであった。
それだけではない。
全員が集まる別荘の玄関ホールには奇妙な十戒が記された紙切れがあったのだ。
「殺人犯を見つけてはならない」という戒律を含む十戒

紙切れには10の戒律が記されていた。
その中でも特に目を引くものが、「殺人犯を見つけてはならない」という戒律だ。
小さな離島に船の迎えが来るのは3日後。
殺人犯は私たちの中にいる。
異常な環境下で、奇妙な戒律とともに3日間を過ごすことになる。
殺人犯は誰なのか。そして、主人公は生きて帰ることはできるのか。
『十戒』レビュー
奇怪な戒律に惑わされる読者
「殺人犯が誰か知ろうとしてはならない」という戒律をはじめとして、あらゆる戒律が奇妙である。
当たり前だが、犯人が有利となる戒律ばかりだ。
しかも、各戒律が具体的過ぎるのも奇妙である。
そんな奇妙な戒律が登場人物の行動を制限する設定が最たる魅力である。
犯人以外は思うように行動できない中、十戒のおかげで犯人は動きやすくなる。
十戒はただの設定だけでなく、実は犯人を捜す際の手掛かりにもなり得るのだ。
読者は犯人を当てることはできるでしょうか?
(読書メーターの感想とかを見ると、割と犯人を当てられた人が多そうな印象)
犯人の頭の中を解説する人の存在

犯人は最後まで誰だかわからない。
そんな中、犯人はこんなことを考えて行動していたんじゃないかと解説するように話す人がいる。
もちろんわかりやすく解説しているわけではないが、しれっとこう考えてたんじゃない?なんてことを言う。
その解説がまた推理の目を惑わせてくる。
「確かに犯人はそんなこと考えていそうだよね」ってものもあれば、「え?妙に的を得ていない?」ってものだったり、「さすがにそこまで考えてないんじゃない?」ってものもあったり。
良くも悪くも犯人?第三者?が提示する仮説に読者は惑わされる。
『十戒』感想
本作品を読む前に『方舟』から読んで
何とは言わないが、同著者の前作である『方舟』から読むことを強くお勧めしたい。
何とは言わないが、そのほうが本作をより楽しめるのではないかと思う。
ちなみに、前作の『方舟』のレビュー記事はこちら。
そして、文庫を読んでいる方はぜひ解説まで読んでほしい。
解説が言葉通り解説になっており、「そういうことだったのか~」とちゃんと理解できるようになっている。
読んでいて感じるなんとなくの違和感がちゃんと整理されるので、是非解説まで読んでほしい。

(いや、逆に『方舟』を読まずに今作品を読んだほうが面白いか・・・?)
正直に言えば・・・
正直な感想を言えば、前作の『方舟』のほうが圧倒的に面白かった。
なぜなら、『方舟』のほうが心理描写と言い、予測不能さと言い、今作よりも明らかに完成度が高かったからだ。
だからこそ、『方舟』がめちゃくちゃ面白かったから、今作も面白いんだろうなと勝手に期待値を上げてしまった部分も少なくはない。
とはいえ、今作品『十戒』は『方舟』を超えられなかったのかなと思う。
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