サスペンス・ミステリー(映画) 映画レビュー

【映画『爆弾』レビュー】|取調室で繰り広げられる心理戦が生み出す極上のもどかしさ

この映画を一言で表すのなら、ファイブボンバーテロリズムと言いたい。

ファイブボンバーを解けなかったらめっちゃ人が死ぬ。

それなのに、解いてしまったら醜さを露呈することになる。

まさに、ファイブボンバーの問題がすべてトロッコ問題になっている状態だ。

ほんまごめんとか言ってる場合じゃない。

取調室で展開されるクイズと心理戦、そしてそれらに翻弄される現場の緊張感をぜひ堪能してほしい。

公式サイトのっけとく:https://wwws.warnerbros.co.jp/bakudan-movie/

映画『爆弾』あらすじ(ネタバレ無し)

謎の男の名はスズキタゴサク

「私、霊感があって、事件を予言できるんです。事件の解決の手助けをするんで、罪を軽くできないですか?」(たしかこんな趣旨)

酒屋の自販機を壊して逮捕された謎の中年男・スズキタゴサクが、取調室で放った奇妙な一言。そして1時間後、彼の予言通りに爆発が起きる──。

この爆発を発端に、東京のいたるところに爆弾があることを仄めかすスズキタゴサク。

だが、身元もわからず、さえない見た目をしていることも相まって、警察側はスズキタゴサクの話を一つも信じない。

そんな中、スズキタゴサクが話す通りに次の爆破が起きる。

取調室で繰り広げられる心理戦——刑事vsスズキタゴサク

予言(?)が的中したことを皮切りに、警察側はスズキタゴサクの話を信じ始める。

1度目の爆破は本当に起きたのだから、2度目の爆破をほのめかされたら阻止のために動かざるを得ない。

だから、爆弾の在りかを探るために取り調べを続けるものの、スズキタゴサクはそう簡単に口を割ることはない。

その代わりに、スズキタゴサクは警察にクイズを持ちかけるのであった。

この男の発する全ての言葉にヒントがある。この男の全ての仕草がヒントになる。

この男は何者なのか。何が目的なのか。そして、目の前の男「スズキタゴサク」は犯人なのか。

東京のどこかに仕掛けられた爆弾。時間がない。

刑事とスズキタゴサクの息詰まる攻防戦が、今始まる。

映画『爆弾』レビュー

良いストーリーにはメインとは別に並行して走る別のテーマがある

良いストーリーにはメインのストーリーとは別に、乖離しすぎず、わかりやすすぎない別のテーマが走っていると思っている。

爆弾という作品には2つのテーマがあるのではないか。

1つは「ミステリー」というシンプルなメインテーマ。

スズキタゴサクという犯人らしき人物から出されるヒントをもとに爆弾を見つけ出し、真犯人とは誰なのか(スズキタゴサクなのか)という捜査を進める、The ミステリーという側面。

そして、2つ目のテーマは、「人間の醜さ」だと思っている。

若干のネタバレになってしまうかもしれないが、スズキタゴサクと刑事の間での取り調べで、答えのない(倫理的に答えを出してはいけないような)問いが出される。

作中では、刑事という職業柄、事件を解決しなければならないという使命感があった。

そこには「解決できれば良い、できるだけ世の中の反感を買うことなく」という潜在意識が潜んでいるように垣間見える。

刑事は爆弾の発見のために答えを出さなければならない。どう転んでも、どう答えても人間の醜い本性が露呈してしまう──そんな残酷な選択を刑事に迫る。

無意識の醜さに意を唱える爆破という構図が描かれていたと思う。

佐藤二朗の怪演が生む「神の視点」の極上もどかしさ

視聴者しか知りえない情報がある。視聴者の思うように行動しない登場人物にもどかしさを感じることはよくあるだろう。

「自分ならこんな行動をするのに」と何度思ったことか。

そんなもどかしさがこの作品でも表現されている。

それは、取調室で行う爆弾の在りかを探るためのクイズと、実際に爆弾を探しながら真犯人の手がかりも追う現場の2つの世界によって描かれているのだ。

視聴者は取り調べの状況も現場での捜査の状況も見ている。

だが、画面上の登場人物にとっては、取調室でしか知りえない情報と、現場でしか知りえない情報が存在し、どちらかしか持ち合わせていないのだ。

どうしても取調室と現場で情報に差が生じてしまい、登場人物が思うように行動してくれない。

このもどかしさと爆弾がどこにあるのか、いつ爆破するかわからないという状況にとんでもないもどかしさを感じ、感情を揺さぶる工夫がなされているように思う。

映画『爆弾』感想

クイズ要素の強いミステリー映画としての完成度

終始スズキタゴサクと刑事の間で交わされる取り調べの言葉、仕草に集中し、刑事と一緒になって推理を進めていた。

明らかにヒントだろうという言葉、仕草もあれば、それは盲点だったというヒントもあり、クイズ好きの人ならだれでも楽しめる作品に思う。

そのうえで、単なるクイズではなく、ミステリー要素もしっかりとある作品だった。

爆弾の在りかを探し出すというクイズ要素の強い推理と、そもそも爆弾を仕掛けるに至った背景や目的、そして真犯人を捕まえるための捜査の2つのミステリーが同じ時間軸上で進められる。

神の視点としてすべての情報を持ちながら推理を進めるも、いとも簡単に推理が外れるミステリーの醍醐味をしっかりと堪能できたと思う。

無駄な描写はなく、クイズを解き、爆弾の発見と犯人の捜査を進めるスリル溢れるストーリーであった。

映画で観るか、原作小説で読むか——『爆弾』をどちらで楽しむ?

個人的には原作を先に読んでみたかったなという思いもある。

というのも、スズキタゴサクの出すヒントに対してもっと推理をしてみたかったなと感じたからだ。

この作品の特徴は、なんといってもスズキタゴサクと刑事の間で行われる、取り調べという名のクイズだ。

仕草もさることながら、スズキタゴサクの発する言葉に大きなヒントがある。その言葉を自分のペースでかみ砕き、推理を進めることミステリーの醍醐味があると思う。

映画だと、スズキタゴサクの発する言葉は繰り返されないので、いろいろ仮説を立てているうちに刑事が仮説を披露してしまう。

スピード感という意味では程よいテンポであるものの、ミステリーをじっくり楽しみたいというあなたには本のほうが向いているかもしれない。

ただ、一概に本が良いというわけでもない。

もしこの作品を活字で楽しんでいたら、頭の中の創造ではそれぞれのキャラクターが演じるもどかしさが補正されてしまうと感じるからだ。

文章だと良くも悪くも頭の中で自分の思った通りの映像が映されてしまう。

つまり、神の視点ですべての情報を知るあなたは、頭の中で登場人物を合理的に行動させてしまう。

もどかしさに感情を揺さぶられる作品だからこそ、活字だと少しハラハラ感の薄れる作品になってしまっていたかもしれない(原作を読んだことがないのでわからないけれど)

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