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【小説『君のクイズ』(小川哲)レビュー】問題.彼は何を追い求めているのでしょう?

ここ数年でクイズの人気は爆発的に上がったと思う。

地上波のテレビでいえば、ネプリーグや東大王(2024年に終わっていたらしい)などが思いつく。

早押しで回答する形式が一般的だが、フリップで回答するものもあれば、時間制限内にできるだけ多く回答する形式のものもある。

いろんな形式があるが、問いがあり、それらに回答するという形式は変わらない。

それがクイズというものだ。

そこで問題です。あなたにとってのクイズとは何ですか?一つ答えよ。(声の出演:関口宏)

さぁ走って!(声の出演:渡辺正行)

※東京フレンドパークリスペクト

『君のクイズ』あらすじ(ネタバレ無し)

生放送のクイズ大会で起きた驚異の"ゼロ文字正答"での優勝

主人公の三島玲央は、生放送のクイズ大会『Q-1グランプリ』のファイナリストとして、同じくファイナリストの本庄絆とタイマンで戦っている。

優勝賞金は1,000万円。

7ポイント先取で勝利となるレギュレーションの中、6ポイント同士で迎えた最終問題

人生を変え得る賞金を目前にして、対戦相手の本庄絆は問題が読まれる直前にボタンを押す

さすがにわかるはずもないと確信し、勝利を確信したのもつかの間。

正解を示す、"ピンポン"というSEが鳴り響く。

こうして、『Q-1グランプリ』は本庄絆の優勝で幕を閉じた

"ゼロ文字正答"の真相とは?

主人公の三島玲央をはじめとしたクイズプレイヤーたちは、本庄絆と番組プロデューサーたちによる"ヤラセ"を疑う

なぜ"ゼロ文字正答"できたのか、ヤラセでなければあり得ない。

早々にヤラセを確信するクイズプレイヤーたちであったが、対戦相手として現場で一問一問を競い合っていた三島玲央は、ヤラセでなかったか可能性も模索する。

すべての問題の回答までの思考の過程を隅々まで振り返ることで明かされる"ゼロ文字正答"の真相とは・・・。

『君のクイズ』レビュー

人の動機をミステリーする

この本の(というか小川哲さんの本全般の)魅力は何といっても、人の行動への解像度の高さである。

「なぜこの登場人物はこのような行動をとったのか」という行動の動機に対して、主人公目線で考察されている。

だが、ただの考察ではないことがポイントである。

というのも、"登場人物目線での考察"であることが重要であり、登場人物の考え方やこれまでの経験、パーソナリティが考察に影響を与えているのだ

とりわけ『君のクイズ』では、主人公である三島玲央の目線で"ゼロ文字正答"の真相を追求しており、物語の中で展開される仮説は三島玲央の目線で構築されている。

クイズに興味を持った幼少期からQ-1グランプリで敗退するまでのすべての出来事が仮説に影響を与えているのだ。

特に、実際に本庄絆と対戦しているからこそ繰り出される仮説もあり、三島玲央の思考に溺れることができる。

ひとえに没入体験と言ってしまえば陳腐だが、没入する先が頭の中であることが何よりもの魅力である。

思考の過程のスナップショット

思考の過程を言語化することは意外と難しい。

なぜなら、人は一度の思考で「無意識」に「あらゆること」を「一瞬のうち」に処理しているからだ。

クイズに答える時も例外ではない。

問いを読まれてから、あらゆる回答の可能性を予測する。

そこにクイズならではの技術も掛け合わせて回答を絞っていく。

そして一つの答えをはじき出し、いやおそらく答えが出せそうと感じたあたりでボタンを押す。

その後も回答までの数秒を使ってさらに正解への確度を高め、答えを口にする。

その間、たぶん5秒くらいだろう。

この5秒を数ページにわたって、感情も織り交ぜながら言語化していることがこの本の2つ目の魅力である。

人って意外とこんなにも考えているんだなと思わされる、知的好奇心?がくすぐられる一冊だ。

『君のクイズ』感想(ネタバレなし)

クイズの答えは人生の中にある

この本を読み終えたとき、スラムドッグミリオネアを観たときと近しい感情を抱いた

というのも、両作品に共通して言えるストーリーとして、クイズの答えをこれまで生きてきた人生から絞り出しているからだ。

答えを絞り出すときはいつでも、答えだけでなくその答えが紐づく人生の一コマが思い出される。

例えば、「後に"三笘の一ミリ"とも呼ばれるゴールが生まれた試合の日本の対戦相手は?」というクイズが読まれたとしよう。

このとき、単純に"スペイン"という回答はできるが、その答えを出す一瞬の思考の中で、大学の友人と観てたとか、べろべろに酔っぱらっていたなとか、勢いでクロアチア戦もみんなで観ようと約束したとか、紐づいていろいろな思い出がよみがえる。

他にも、高校生の頃の定期テストでどうしても答えが思い出せない時に、授業風景を頭の中で再生して答えをひねり出したりした経験なんかはみんなもあるだろう。

これらは自身の経験をもとにした具体例だが、小説の中でも主人公が人生を振り返って答えを絞り出している様子が描かれている。

クイズの答えは自分の人生の中に転がっている

どんなクイズが読まれるかはわからない。

けど、1つでも多くのクイズに答えるには、自分の人生経験を広げる必要があるのではないか、なんて思わされた。(クイズに答えることがこの先の人生でどれくらいあるかはわからないが)

でも、人生で出会うクイズ(問い)に答えはない

クイズの答えは自分の人生の中に転がっている。

でも、世の中には答えのない問題のほうが多い

具体例を挙げだしたらキリがないが、その最たる一例として"人付き合い"なんてものがあるだろう。

この人は何を考えているのか、何のためにその行動をとったのか

人の感情が絡むと、突然答えが存在しなくなるのだ

それもそのはず、クイズは論理のもとに成り立っているが、論理だけで説明できない感情というものに答えがあるはずがない。

あるのは、"その人にとっての正解"であって、"私の考える正解"とは異なる。

答えが存在しないのではなく、人によって答えが異なるのかもしれない

人によって異なる答えを追い求めていくのも面白いなと感じる作品だった。(感想にしては飛躍しすぎである)

映画化されるらしいが・・・

最後にどうでもいい話をしようと思う。

皆さんは小川哲さんの顔を見たことがあるだろうか。

※画像を出すのは著作権的にどうなのかと思うのでURLで勘弁してください
URL:https://www.shinchosha.co.jp/writer/7200/

そう、ちょっとだけ松山ケンイチに似ているのだ。

これもURLで勘弁:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%B1%B1%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%82%A4%E3%83%81

そして、小川哲さんの別作品である『君が手にするはずだった黄金について』では、明示されてはいないもののほぼ小川さんが主人公であるかのような物語(限りなくエッセイに近い小説のイメージ)となっており、頭の中で投影される主人公の顔はもれなく小川さんの顔だった。

そのせいもあって、なぜか『君のクイズ』の主人公である三島玲央も頭の中で小川さんを投影しながら読んでしまった

そして、映画化されるとなれば、もちろん主演は松山ケンイチさんだと思ってしまうのであった。(まぁ実際は中村倫也さんらしいので全然イメージとは違うのだが)

何はともあれ、少なくとも小説はめちゃくちゃ面白かったので、映画も見てみようと思う。(※2026年5月15日公開)

映画『君のクイズ』の公式HP:https://yourownquiz.toho-movie.jp

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