
あなたは考えることが好きですか?
好きと答えたあなたへ。今から紹介する本はぶっ刺さります。
そこまで好きじゃないと感じたあなたへ。今から紹介する本を読めば、考えることが楽しくなると思います。
考えるってどうやるの?って思ったあなたへ。ぜひこの本を手に取って、”考える”ということを体現している人を感じ取ってみてください。自然と考えられるようになっています。そして、考えることが楽しくなっていることでしょう。
この本が向かない人はいるのかって?考えることをあきらめた人でしょうか。
でも、そんな人でも楽しめる作品だと思いますよ。
『君が手にするはずだった黄金について』のざっくり構成
エッセイのような小説、小説のようなエッセイ
この本は6つほどの短編からなるエッセイのような小説である。
“エッセイのような”と言っている理由は、出てくる主人公が著者である小川哲さんとの境遇と似ているからである。
東京大学のシーンがあったり、哲学に知見があったり、といった内容は著者を彷彿とさせる。
まぁ会ったことないし、本当がどうか確かめようもないんだけどね。
だけど、一般人が知りえる著者小川哲さんさんの情報と、作中に出てくる主人公(そういえば名前が出てきていない??)の情報は部分的にリンクするので、まぁ体験談の色が強いのかなぁなんて思っている。
本当にこの本のジャンルは何なのか・・・
短編が紡ぐ主人公の思考の癖
全てのストーリーにつながりがあるわけではない。
全ての章がその章で完結しており、それぞれのエピソードでの登場人物が何を考えているのか、を主人公が考察する。
だが、あえてストーリー性を持たせるのであれば、それぞれのエピソードで他者の思考を読み取ろうとすることで、自然と自分の思考の癖や哲学が明確になっていく、というストーリーになると思う。
いろいろな人との出会いやふるまいを見ていくことで、主人公は自分の哲学をどのように明確化していくのか。
それがこの作品の見どころであり、伝えたいことなのではなかろうかと思う。
『君が手にするはずだった黄金について』感想
自分の癖は他の人の頭の中を覗くことで明確になる

哲学と聞くと少し難しい印象がある。
正直自分自身も哲学には詳しくないので偉そうなことは語れないが、何かについて深く考えてみることは嫌いじゃない。
この人は何を考えているんだろう。なぜそう考えるのだろう。この発言の意図は何なのだろうか。なぜその行動をとったのだろうか。
こんなことをたまに考えるわけだけども、実は自分自身に問うてみても意外と答えがわからなかったりする。
無意識というものもあれば、意識的ではあるけど目的はないということもある。
意外とみんな自分のことをわかっていない。それも、"何一つ"。
作中の主人公も自分自身のことを完全に理解できていないものの、完全に理解できていないことは理解している。
どうにか自分自身を理解しようと、他者が考えていることを理解しよう、そんな構図がところどころに垣間見える作品であったように思う。
人間観察はいいぞ
この本を読んで初めて、「自分って人間観察が好きなのかもしれない」と気づかされた。
この作品では、この人は何を考えているか、なぜそう考えているのか、みたいな考察が主人公目線で語られている。
だが、主人公の考察とは別に、自分自身も登場人物の思考を考察してしまうことに気づかされた。
主人公の考察と同じだった、自分はこう感じたけど主人公の考察は違った、みたいな考察のズレもまた面白いなと感じる部分に思う。
他者の言動、行動からいろいろ考えてしまう点で人間観察が好きだし、考察のズレを無意識に楽しんでいることが人間観察の醍醐味なのかなと感じる作品だった。
哲学は難しすぎる、こともない

哲学と聞くと、アリストテレスとかデカルト、ソシュールみたいな高校の現代文の授業で登場するような哲学者を思い出してしまう。
具体的にどんな思想を持っていたかまでは覚えていないが、なんとなく小難しくて敬遠してしまう自分がいた。
だが、この作品の主人公は哲学を専攻しておりそれなりに詳しくある一方で、日常でも使える考え方を披露しており、哲学にアクセスするハードルを下げているように感じた。
意外と考えすぎてしまう人も哲学者だったりするのかもしれない。
可能な限り思考を抽象化し、あらゆる物事に対しても同じ考え方で接することができれば、もうそれは哲学者なのかもしれない。
みんな哲学者になるポテンシャルを秘めている。
そんな感想を抱かせてくれる主人公だった。
哲学への敷居はだいぶ低くなった。
いつか哲学に関する本も読んでみようかと思う。
雑コラム【考える習慣をつけるには】
せっかく"考える"ということにフォーカスを充てて記事を書いてきたので、自分なりに思考を深めることに役立った本と行動をそれぞれ紹介したい。
ビジネス書『ゼロ秒思考』"考える"という状態は"考えていない"

『ゼロ秒思考』というビジネス書が存在する。
ビジネスマンにとっては必読書だと思ってはいるが、あまり読んでいる人は多くない気もしている。
超ざっくり解説をすると、問いを立てて、問いに対するなぜや仮説を手書きで3行程度(だったはず)書くというもの。
大事なのは、考えて書くのではなく、0秒で(瞬時に)書き記すことである。
細かい話は正直覚えてないけど、頭の中でうーんと考えていても前に進まない・深くはならないので、さっさと言語化していこうよ、という魂胆だ。
ああでもないこうでもないと考えている状態は、もはや考えているとは言わないのだ。
たったこれだけなので、驚くほど思考が深まると実感している。
そして、これを続けていると自然と頭の中でも考えられるようになるし、深めるスピードも異常なほど早くなったと思う。
元々はビジネス向きの考え方だけど、日常生活でも十二分に使えるのでおすすめです。
日記を書け

次におすすめしたいのは、日記を書くということだ。
自分は10年日記なるものを書き始め、1年が経った。
10年日記を始める前も気が向いたときに、自分の思ったことを言語化する作業をしていた。
これが本当に効いた。
言葉にすると一気に取り扱える”何か”に変化する。
大人気ドラマ『アンナチュラル』の第一話のタイトルも「名前のない毒」だった。
名前がつくだけで脅威がわかるし、対策も考えられる。
病名を与えられることでアプローチが明確になる。
逆に言えば、名前がつかなければ(=言葉にならなければ)取り扱うことができない。
だから、ひたすら言葉にするのだ。
そのひたすら感情を言葉にする作業というものが日記を書くということなのである。

出来事も大事だが、出来事を通して感じたこと、感情を書き記す。
それだけで、自分の考えがクリアになる。良いことも悪いこともクリアになる。
そうやって自分のことを理解していくのだ。
この本の作者は、小説という形を取って人を理解し、自分を理解しようとしているのかもしれない。
そして、小説を通じてその方法を広めようとしているのかもしれない。
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